放射線治療技術学研究部門

放射線治療技術学研究部門radiotherapy physics research group

放射線治療技術学研究部門


radiotherapy physics research group

射線治療技術学研究部門射線治療技術学研究部門
放射線治療は、がんの三大治療法の一つとして重要な位置づけであり、強度変調放射線治療、画像誘導放射線治療など、治療技術の研究が活発に行われています。当研究部門では、高エネルギーX線治療装置を用いた呼吸同期照射法、陽子線治療装置を用いた新しい照射野形成法の研究を通じて、より患者の負担が少ない放射線治療の実現を目指しています。またGel線量計を用いた三次元線量測定法の研究など、近年の高度化した放射線治療装置において、より正確な治療が行えるよう治療技術の進歩に貢献しています。

Radiation therapy is one of the three major cures for cancer. Recently, new technology has been energetically developed, such as intensity modulation radiation therapy and image guided radiation therapy. In our laboratory, we contribute to the development with research in respiratory gating irradiation method for x-ray therapy, new beam delivery technique for proton therapy, and polymer gel dosimeter for 3D dose measurement.

Electron Gamma Shower Version 5 (EGS5)の利用と電子線付加フィルタの開発(小口研究室)


 
 放射線の物質内の相互作用をシミュレーションする汎用モンテカルロ計算コードのひとつにElectron Gamma Shower Version 5 (EGS5)があります。また、複雑な計算ジオメトリを構築するためにGUIソフトウェアの1つであるCGViewを用いることで、より複雑なモデルでのシミュレーションが可能となります。CGViewによって治療用直線加速器のヘッド構造を忠実に再現し、EGS5により加速器ターゲットより射出された粒子 (光子・電子・陽電子)のヒストリーを詳細に計算し、使用されている物質情報の記述を行うことで自由度の高い計算を精度良く行うことが可能となります。単純な条件でシミュレーション結果を実測値と比較しその整合性を検証することにより、実測が難しい領域でのシミュレーション計算精度が担保できます。
当研究室では高エネルギー電子線治療における深部線量分布 (PDD)の最適化を図る付加フィルタの開発を行っています。電子線はX 線やγ線と異なり、荷電粒子であるため物質中を通過する際に周辺物質にエネルギーを落とす相互作用をしつづけ、その運動エネルギーがなくなると停止して消滅します。その結果、高エネルギー電子線による物質内の線量分布はある深さで線量が最大となり、その後深部で急激に減少する特徴を示します(図1)。この特徴により、電子線は主に表在性腫瘍の治療に用いられていますが、エネルギーが低下するにつれて入射表面(浅部)の線量もより低下してしまう特性も持ち合わせています。
電子線付加フィルタの開発
図1 高エネルギー電子線(4, 6, 9 MeV)の水中における深部線量分布
理想的には浅部領域の腫瘍に対して腫瘍全範囲で高線量を保ち、腫瘍後方の正常組織では線量が激減する分布が望まれます(図2)。そこで、本研究ではエネルギーが低下した場合でも飛程を保ちつつ、浅部線量を高く補償するような付加フィルタの開発をおこなっています。私たちはこのフィルタの設計にEGS5を利用しています。
電子線付加フィルタの開発

ポリマーゲル線量計の開発(小口研究室)


 
3次元線量分布を測定するための線量計として、現在、ポリマーゲル線量計の研究を行っています。ポリマーゲル線量計は化学線量計の1つで、ビニルモノマーの放射線重合反応を利用しています。我々が作製しているのはMethacrylic and Ascorbic acid in Gelatin Initiated by Copper (MAGIC)ゲル線量計という種類のもので、その組成を表1に示します。

ポリマーゲル線量計の開発

 ポリマーゲル線量計に放射線が照射されると、放射線重合反応によりモノマーがポリマーとなり析出します(図1)。モノマーが重合反応しポリマーとなる量は吸収線量に比例します。したがって、ポリマーの量を測定することで吸収線量の計測ができます。モノマーがポリマーになると、周囲の水分子の環境や物理的密度、光の透過率が変化します。そのため、ポリマー量はmagnetic resonance (MR)やX線 computed tomography (CT)、optical CTで測定できます。ポリマーゲル線量計での計測は、信号値と吸収線量を結びつける校正曲線作成過程と線量分布を取得するファントム過程に分けられます。ファントム検証で取得された信号強度分布を作成した校正曲線で線量分布に変換することで、ファントム内の線量分布測定が可能となります。
容器の形を変えれば、患者を模擬したポリマーゲル線量計を作製することができます。これにより、実際の放射線治療時に近い患者体内線量分布が取得可能であると考えられます。しかし、ポリマーゲル線量計の特性は、組成、作製手順、ファントムの大きさ、保管温度、読み取り時のパラメータなどの影響を受けます。そこで、我々は、組成や保管、撮像の条件などを変えて、より良いポリマーゲル線量計の作製および読取りを目指し研究しています。
ポリマーゲル線量計の開発

炭素線治療における中性子被ばくの低減化に関する研究(小森研究室)


 
高エネルギーに加速された陽子または炭素イオンを用いた粒子線がん治療は、標的腫瘍への線量集中性がよく、障害が少ない治療が可能です。粒子線治療における照射野形成法の一つである拡大照射法は、シンクロトロンなどの加速器から供給された直径1cm程度のビームを、横・深さ方向に拡大して線量が一様な照射野を形成し標的腫瘍に照射します。拡大照射法のデメリットの一つとして、中性子被ばくがあげられます。粒子線が照射野形成装置と衝突すると二次中性子が発生します。照射野形成装置は患者さんの直前に設置する必要がありますので、不要な被ばくを受けることになります。もちろん、がんを治療するメリットの方がはるかに大きいので、拡大照射法を用いて粒子線を患者に照射しますが、不要な被ばくは少ないにこしたことはありません。
我々はモンテカルロシミュレーションを用いて、照射野形成装置に中性子被ばく低減に最適化されたコリメータを追加配置することで、どの程度の低減効果があるのかを検証しました。

ポリマーゲル線量計の開発
放射線医学総合研究所の炭素線治療装置HIMACの照射野形成装置をシミュレーション内に構築し、コリメータの位置、大きさ、材質などの違いによる、患者位置での中性子周辺線量当量の変化を計算しました。
結果の一例を図1に示します。横軸は標的腫瘍からの距離、縦軸は照射線量当たりの中性子周辺線量当量を示します。最適な場所にコリメータを追加することで、35%程度の低減が確認されました。
 研究成果は下記学会で発表を行いました。現在、海外雑誌に論文を投稿中です。


Monte Carlo study on reduction in the secondary neutron exposure in passive carbon-ion radiotherapy. European Congress of Radiology 2013; EPOS™ Scientific Exhibition. 2013
モンテカルロシミュレーションを用いたパッシブ炭素線治療時の二次中性子被ばくの低減. 第105回日本医学物理学会学術大会. 2013
モンテカルロシミュレーションによる炭素線治療における二次中性子線量の低減に関する検討. 第5回中部放射線医療技術学術大会. 2012

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